ぐるぐると回る。           

何が回っているのかは知らない。もしかしたら自分自身なのかもしれない。

暗い暗い海の底。

ゆらゆらと揺られて、回る、落ちる感覚。

 

体が重い。

 

「ぅ・・・」

「あぁ、気がついたかい・・・?動ける?」

目がかすむ。

頭の中が霞掛かったようにはっきりとしない。

「・・・私、は一体・・・?」

見慣れない天井だ。

何度か瞬きをして、声が聞こえてきたほうへ視線を移す。

「善法寺、伊作・・・先輩?」

「具合はどう?・・・何か飲むかい?」

伊作はゆっくりと立ち上がり、部屋の隅に置いてあった水筒を持って三木ヱ門の方に近づいてきた。

「はい」

三木ヱ門はゆっくりと手を伸ばそうとするが、伸ばしかけた手はぱさりと布団の上に落ちた。

「・・・?」

伊作は水筒を置き、布団の横まで移動してそっと三木ヱ門を抱き起こし、三木ヱ門を支えたまま口元へ水筒を運んだ。

「・・・ありがとう、ございます・・・」

体が重い。

声を出すのすら、しんどい。

「君は、丸二日眠っていたんだよ」

ふつか?

三木ヱ門は少し舌足らずの声で返した。

「・・・お腹は空いていないかい?」

ふるふる、と三木ヱ門は首を横にふる。

「ダメだよ、確り食べなきゃね。・・・今、おばちゃんにお粥を作ってもらうから」

そういって伊作は部屋を出て行った。

ふら、と体が傾く。

(何か、眠い・・・)

ただひたすらに、眠たい。

体がそれだけを求めているようだ。

(どう、して・・・?)

少し頭が痛いかもしれない。重い腕を動かして額を触る。

熱い・・・

熱があるのかな・・・。

瞼が重たくて、知らない間に目を閉じていた。

 

ゆらゆらと、揺れる感覚・・・

(・・・?)

なんだろう・・・

暗い、暗い世界・・・落とされた底に、何かが見える・・・あれは、ダレ?

 

『あ、・・・ぃ・・・でぇ・・』

 

あの、声は・・・?

 

『気持ちいい・・・もっと、して・・・?』

 

「っ・・・!!!!」

三木ヱ門は飛び起き、口を押さえた。

「ぐ、っ・・・ぅ・・・!!!」

何だあれは、何・・・何、何・・・?

気持ち悪い・・・っ!!!

ガタ、と障子が開き、口を押さえて吐きそうになっている三木ヱ門の姿を見て、障子を開けた主は慌てて駆け寄る。

「田村」

三木ヱ門の目には涙が溜まっていて、背中を擦る主の・・・潮江文次郎の姿を見た途端に溢れて流れる。

「気分が悪いのか?」

規則的に背を擦りながら、声をかけ続ける。

なんて非、現実的な光景だろう。

荒く息を吐く三木ヱ門を見ながら、文次郎は苦い顔をしていた。

「・・・ぃ・・・から・・・」

「どうした?」

「・・・もう、だいじょうぶ・・・です、から・・・」

三木ヱ門は力の入らない手で文次郎の胸を押し、離れようとする。

「もう、いい・・・から・・・」

「!・・・吐いたのかい?」

粥を持ってきた伊作は、障子が開いているのに気付いて慌てて部屋の中に入る。

文次郎と三木ヱ門の様子を見て、少し眉を寄せた。

「・・・まだ気持ち悪い?」

伊作は粥を床において三木ヱ門に近づく。

「・・・・」

こく、と力なく頷く三木ヱ門を見て、手ぬぐいを取り、汚れた口元と手を拭く。

「文次郎、任せていい?」

伊作はそういって立ち上がり、急ぎ足でどこかへと向った。

項垂れている三木ヱ門の顔色は驚くほどに青い。

額には汗が滲んでいて、文次郎は自分の手ぬぐいでそれを拭う。

「汚い、です・・・」

「汚くない」

文次郎から離れようとしていた三木ヱ門の手から力が抜け、文次郎はどうしたのかと顔を覗き込む。

何度も、何度も三木ヱ門の目から涙がこぼれ、瞬きもせず、表情をなくした顔を、頬を伝い服をぬらした。

「たむ・・・」

声をかけようとした文次郎は、それ以上続けることが出来ず、三木ヱ門を抱きしめた。

 

 

「伊作」

「・・・留」

井戸で水を汲み、手ぬぐいを洗っている伊作に食満が近づき、声をかける。

「・・・吐いたのか?」

「うん。・・・気がついたときは落ち着いていたんだけれど・・・目を放した隙にね」

学園長や先生たちに呼び出されていた文次郎が戻ってきていて、本当によかったと思う。

「お前は、大丈夫なのか?」

「・・・平気だよ。・・・あの子の苦しみに比べたら」

伊作は言って立ち上がる。

「水、俺が持つから」

食満もそういって桶の水を持ち上げる。

「4年の生徒が下賎な男達に一年を人質にとられ、怪我を負わされ、その傷から出た熱」

文次郎と、仙蔵と一緒に考えた口裏あわせだ。

「記憶の逆流、か・・・」

あの、プライドの高い子供にとっては、死ぬほどつらいだろうな・・・

食満はぼそりと呟き、伊作はその言葉を聴いてうつむいた。

「早く戻ろう」

「ああ」

 

 

「文次郎、様子はどうだい?」

「・・・」

文次郎は黙って首を横に振った。

伊作は慌てて近づき、顔を覗き込む。

「・・・うん。まずは水を飲ませて、手ぬぐいを濡らして来たから体を拭いてあげよう。このままにしていたら、大変だからね」

「布団なら俺のがあっただろ」

食満は桶を置いて襖の中から布団一式を取り出す。

「ここに寝かせろ」

三木ヱ門の夜着を脱がせ、体を拭こうと手ぬぐいを当てる・・・と、

「ひっ・・・!!!」

途端、三木ヱ門は体をこわばらせて逃げようと体を跳ねさせた。

「!」

「留、文次郎。抑えて」

あくまでも冷静に言った伊作の言葉どおり、食満も慌てて動いて文次郎の横に座る。

あまり力を入れないように抑えるが、4年の力とは信じられないくらいの力で暴れようとする三木ヱ門に、驚きを隠せない。

「直ぐ終るから・・・」

伊作はここに三木ヱ門を連れ帰ったときと同じように、綺麗に体を拭いてあげる。

その間も、三木ヱ門の目からは涙が流れ続け、怯えているのか息を切れ切れに吐いていた。

「私の予備の着物に着替えさせよう」

体を拭き終わった伊作は立ち上がり箪笥から着物を一着取り出して夜着を脱がせた三木ヱ門に羽織らせる。

体が熱かった。

また熱が上がったかもしれない。

手早く着物を着せ終えると、文次郎に言って三木ヱ門を隣の布団へと移動させた。

「田村」

怯えている三木ヱ門の頬に触れながら、何度も、何度も根気強く話しかける文次郎の姿を見て、伊作は「そうか」と思った。

(・・・・)

「薬の調合をしてくる。留、手伝ってくれるかな?」

「俺が?」

「うん。・・・今は、そっとしてあげよう?」

最後の方を小さな声で言った伊作に、食満は「なるほど」という顔をした。





伊作達が戸の前から遠ざかる気配がした。
残された、閉鎖された空間。

そこには、おそらく俺と言う存在は居ない。
居るのは田村だけ。

静かに、静かに・・・其処に在る、確かな存在。

その丸い目は何一つ映していない。

ただ、虚空のみを見つめている。

あの頃の、たった二日ほど前の、勝気な田村三木ヱ門の姿はそこには無かった。

ただ涙は止まることなく溢れている。

「・・・田村・・・」

遅かったのだと、思い知らされる。

もっと早く、あの場にたどりつけていれば三木ヱ門はこんなに苦しむことも無かった。

そう思うと、心臓がえぐられるように痛かった。

(・・・・三木ヱ門)

文次郎は三木ヱ門の頬を伝う涙を拭き、横たえた体に布団をかけた。

 

 

 

あぁなんでこんなことになったんだろう、と思う。

きっと心があるから苦しいんだ・・・つらいんだ。

思い出したくない。

ずっと記憶の奥底に秘めていたい。・・・いや、違う・・・どこか遠くへ、捨て去ってしまいたい。

どうして・・・どうして。

こんなにも苦しいのに・・・(助けて)

何度も叫んだ。だけどその心の中の叫びは、誰にも届きはしなかった。

  

 

「田村」

どこか遠くで、私の名を呼ぶ誰かの声がしていた。

私は何を見ているのか、何を聞いているのか。

そんなことすらも解らない。

ただ、眠い。

でも眠りたくはない。

眠ればあの幻が現れる・・・。


あれは、幻だった・・・?

 

冷たい感触だった。

だけどただただ体だけは熱を有していて、その熱さに己の体を掻き毟りたくなる様な衝動と。

体中を這い回る熱と。

そして、何でもよかった。触れてくれるものを求める衝動と。

なんとも思っていない相手だった。

好きな相手ではない。むしろ、憎んでいる相手といってもまちがいじゃない相手。

それも複数。

冷たく、濡れた感触を求め、自ら誘い、あまつさえ・・・

  

 

「いや・・・・っ!!!」

「田村!?」

突然飛び起き、叫んだ三木ヱ門の頬を、自覚を促すように文次郎は数回叩いた。

三木ヱ門は荒く息を繰り返し、強く拳を握り締めていた。

・・・う・・・、て?

「?」

よく見なければ解らないほど小さく、三木ヱ門の口が動いている。

・・・し、て・・・?」

「田村?」

「どうして・・・どうして、どうして・・・?」

その、小さく紡がれている言葉を聞いて、泣きそうだ、と思ったのは多分勘違いなんかじゃない。

「どうして・・・?ね、先輩・・・どうして?」

三木ヱ門は、色を失った瞳で・・・文次郎をじっと見つめた。

その顔には、悲しみと、自重の意味も含めた笑みが湛えられている。

なん、で・・・私がっ・・・!!!

「三木ヱ門!」

「っ・・・」

文次郎は咄嗟に三木ヱ門を抱きしめ、強く、強く名を呼んだ。

「違う・・・違うっ、あれは、あれは私じゃない・・・僕、じゃ・・・っ」

外には光が差し始め、夜明けを告げる鶏の鳴き声が聞こえる。

 

田村三木ヱ門が、「自」を失って3日目の朝・・・

 

 

「文次郎、田村の様子はどうだ?」

から、と障子戸を開いたのは部屋の主の一人、食満留三郎だった。

「・・・今、寝た」

先ほどまで泣き叫んでいたのに、まるで糸が切れたように、コトリと。

「これ、伊作が作った解熱剤。寝れない時用の睡眠薬も入ってる。いざという時は飲ませてやれ」

「・・・伊作は?」

「ちょっと野暮用だと。俺も向こうに行くから、お前は田村についていてやれ」

違ったのに。

こんな言葉を言う為に、「守った」んじゃ無いのに・・・


どうして、どうして・・・?
 


私は汚されたんじゃない。・・・“気付いて”しまっただけ。

こんなにも、汚れきっていたのは自分自身だということに。



「善法寺伊作先輩、食満留三郎先輩っ!」

学園長の庵へと向う途中、まだ幼い声をした一年の二人に呼び止められて伊作と食満は振り返った。

「・・・お前たちは、会計の・・・」

「加藤団蔵と任暁左吉です!」

その一年の二人は、赤い瞳で伊作と、食満の方を睨むように見つめていた。

「あの・・・田村三木ヱ門先輩は・・・?」

大丈夫なんですよね?

そして泣き出しそうな声でいい、とうとう涙がぽろりと零れ落ちた。

(・・・)

守りきり、傷ついた三木ヱ門と、守られて傷ついた一年、か。

そんなことを思う。

「大丈夫。命に別状はないよ。ただ、酷い怪我をしてしまったから、もう少し安静にしていないといけないんだ」

「田村先輩・・・そんなに酷いんですか?」

「あぁ。・・・面会謝絶だ」

本当なら、心配かけないように「大丈夫だよ」位言ってやるべきなのかもしれない。

だけど、今は双方のショックが大きすぎる。

今の姿を見られることを三木ヱ門は望んでいないだろうし、自分たちのせいであんな状態になっている三木ヱ門を見れば、今以上に深く傷つくだろう。

だからこそ、優しい言葉をかけない方がいい。

「・・・先輩・・・」

「しばらくすれば熱も引くだろうし、怪我も落ち着くだろうから・・・その時は、一番に君たちに知らせるよ」

「お願いします!」

一年の二人はそういって一礼すると、直ぐに走って教室のほうへ向った。

「さて、私達も急がないとね」

 

 

6年は組、善法寺伊作、食満留三郎。只今参りました」

入りなさい、という低い声が聞こえて、ゆっくりと扉を開けた。

「なんで呼ばれたか、解っているな?」

学園長の声に、怒気が含まれているのは空気でわかった。

室内には異様な気が漂っていて、並大抵の人間ならその気に圧倒されるくらいだ。

だが、伊作は顔色一つ変えずにまっすぐ学園長の顔を見ていた。

「心当たりなどありません。全て、お話したとおりです」

そう言った次点で、三木ヱ門を庇っていることは明白だったのだが、伊作も、食満も・・・そして悪漢どもを学園に連れてきた仙蔵も、おそらく真実を話はしないだろう。

「食満留三郎。お前は?」

「相違ありません。私が知りうることは、善法寺伊作とまったく同じです」

揺るぐことのないものが、その瞳から感じられた。

「・・・そうか」

ここまで真実をひた隠しにしているということは、おそらくは最悪の事態が起こったということ。

それは、あの三人に自分の私用を頼んだ自分にも責はある。

「・・・なにかあれば新野先生に相談しなさい」

「・・・はい。ありがとうございます、学園長先生」

伊作は軽く頭を下げ、踵を返す。

「それと、授業にはきちんと出なさい」

食満は頭を下げ、伊作の後を追って庵を出た。

 

「・・・よかったんですか?学園長」

「わしにも非はある。・・・それに、それを気にし、田村三木ヱ門がこれ以上苦しむのはわしの本意ではない」

こんなところで先生ぶるんだから、と土井は思う。

「して、田村三木ヱ門の様子はどうなんじゃ」

「四六時中潮江文次郎が見ています」

「そうか。・・・仕方あるまい。しばらく様子を見ることにしよう」

この学園で育てるのは忍びだというのに、とことん甘くなったものだな、と溜息を吐いた。

 

 

「待て、伊作」

早足で歩く伊作を追いかけながら、食満が言う。

「・・・結局、私に出来ることなんて何も無いんだね」

自重するように笑った伊作を、食満は不信そうな目で見ていた。

「それで?」

「それで、って・・・」

「お前がやらなきゃ、誰がやる?一番苦しんでいるのは田村三木ヱ門だ。お前じゃない」

「・・・そう、だね。私が確りしないとね」

弱音を吐いてごめん、と言うと、食満が困ったように笑った。

 

「仙蔵?」

自室の近くまで来ると、障子戸の前に立花仙蔵が立っていた。

「どうした、中に入らないのか?」

そういう食満に、仙蔵は複雑な顔をしていた。

「我々忍びを目指すものは、4年に到る前にそれを受ける。・・・なのに、田村はあんなにも苦しんでいる。何故だ?」

それはおそらく、“忍者”として生きるうえでなくさなければいけない感覚であり、それを覚悟している仙蔵からしてみれば不思議なものだったのかもしれない。

だが、仙蔵もそれを口にしてはいけないことを知っている。

だからこそ、中に入らずに伊作と食満だけに話した。

「・・・それは、確かにその通りだと思う。だけど・・・そういうのって、割り切れないものだと思うよ」

「そういうものか?」

「うん。そういうものだよ」

そう言って、伊作はゆっくりと障子を開けた。

 

 

「調子はどうだい?」

見れば三木ヱ門は布団の中に寝たまま天井を見ている。

また泣いていたのか、涙の後が残っている。

「文次郎、疲れただろう?寝てきた方が良いよ」

「・・・いや、ここにいる」

視線だけを動かして文次郎を見た三木ヱ門を見て、文次郎は悲しそうな顔をした。

「傍にいたいんだ。・・・いさせてくれ」

美しい子だった。

気高く、大輪の花を咲き誇らせていた、そんな子だった。

この子から笑顔を奪ったあの男達が許せない。

この子に笑顔を返すことが出来ない自分が許せない。

なのにそれでも、この子供は自分の事を信じているのだと、そう思うと・・・胸をえぐられているほどに、辛い。

「・・・外の空気が、吸いたい・・・」

唐突に三木ヱ門がそう口にして、周りにいた伊作や食満は驚いた。

今はどうやら落ち着いているようだけれど、それでもいつもと同じ「声」に驚きを隠せなかった。

昨夜、あれほど取り乱して・・・苦しんでいた子が、自分から声を発したことに。

「解った」

学園の、今この場にいる4人以外には三木ヱ門は大怪我をしていて動けない。面会謝絶ということになっているが、実際には動けないというほどではない。

心因的なものが深くかかわっている為の心身虚脱と、怪我から来る熱。そしてその原因が三木ヱ門を苦しめていた。

「つかまっていろ」

文次郎はひょい、と三木ヱ門を抱き上げて部屋を出る。

そしてゆっくりと縁側へ座らせた。

ふら、と倒れかけた三木ヱ門を支え、文次郎は直ぐ隣に座る。

「暖かい」

日差しを浴びながら言う三木ヱ門は、それでもやっぱり表情を失くしていて。

「だが、風邪を引く」

以外にも、ひざ掛けを持ってきたのは仙蔵で、それをゆっくりと三木ヱ門に羽織らせる。

心を失っている、というよりも閉ざしているように映ったその姿に、あくまでも“普通”に接した。

「では、私は授業に戻る。・・・またな、田村」

三木ヱ門は視線を動かして仙蔵を見る。

仙蔵は薄く笑ってゆっくりと背を向けた。

「日に当たるのは良いけど、あまり長時間はダメだよ?まだ、絶対安静なんだからね」

「ああ」

伊作の言葉に文次郎は返答を返して、自分の上着も脱ぎ、三木ヱ門に着せた。

外はこんなにも晴れて穏やかなのに、気持ちは一向に晴れない。

(あぁ・・・眠い・・・)

いっそのこと、目が覚めなければいいのに・・・

 

 

 

「やっぱり、心配だ」

「だけど絶対安静なんだろう?私達が行っても、きっと追い返される」

「やってみなければわかんないじゃないか」

大怪我をしたと聞いた。

なのに見舞いも許されないなんて、悲しい。

他の誰よりもずっと一緒に時間を過ごしてきたのに、近寄ることすら許されずに、居場所を六年生に奪われてしまったようで悲しい。

「・・・4年間、ずっと一緒だったから」

綾部は悲しそうに溜息を吐いた。

そして、それは滝夜叉丸も同じだ。同じ気持ちだった。

「・・・僕はずっと一緒じゃなかったけれど、やっぱり三木君が心配だ。・・・行くだけ行こう。追い払われた時は、その時だよ」

タカ丸の言葉に、滝夜叉丸と綾部は頷いた。